2012年1月8日日曜日

他人の不幸は…

 
他人の不幸は…


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『鑓の権三重帷子』

(やりのごんざかさねかたびら)



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あらすじ

鳥取藩士の笹野権三は、若殿の祝言で茶を点(た)てることを命じられた。
権三は「鑓の権三」と異名をとる遣い手だったが、太平の世に剣術では出世できない。
そこで、茶道役での出世を狙う。

しかし、この手前は格式の高い「真(しん)の台子(だいす)」で行わなければならない。 ... これは茶道指南役・浅香市之進から伝授を受けたものしか扱えず、権三はまだ伝授を受けていなかった。
しかも市之進は現在、江戸詰めで鳥取にはいない。
そこで権三は、市之進の妻おさゐから、真の台子の伝授を受けようと考えた。

権三が目指す祝言の茶道役を彼の同僚・川側伴之丞も狙っていた。
権三は伴之丞の妹・お雪と縁談を進め、本来なら伴之丞と親しく付き合えるはずだったが、権三は、嫌味な性格の伴之丞が好きになれず、伴之丞も権三をライバル視し、やはり真の台子の伝授を受けようと、おさゐに近づいた。
伝授を望む権三の来訪を、おさゐは喜んだ。 美男の誉れ高い権三で、娘の夫になってもらいたいと、おさゐは権三に伝え、もし承知してくれれば伝授すると約束した。
権三は悩んだ。 自分にはすでに許婚(いいなずけ)がいる。 ここは恋を取るか、出世を取るかの選択となった。

悩む権三の姿を見て、おさゐはいらつく。 権三には許婚がいるのを知っていた。 権三が締めていた帯も許婚が贈ったもの。
このままでは権三が取られてしまう。
おさゐは忌々(いまいま)しい帯をを権三から取り、私のを締めればいいと自分の帯を解いた。 すると、この状況を伴之丞が目撃する。

伴之丞は夜這(よば)いをして、おさゐから伝授を得ようと企(たくら)んでいた。
しかし、権三に先を越されたと早合点し、二人の帯を持ち去り、それを証拠に不義密通を訴え出た。

権三とおさゐは、二人で鳥取から逃げ去るが、逃亡先の京伏見で、おさゐの夫・浅香市之進の手に掛かる。

ここを観て聴いて

二人に不義密通の事実はなかった。
しかし、解かれた帯を証拠にされては、もう言い逃れは出来ない。
権三はもう、武士が廃(すた)ったと切腹を覚悟するが、おさゐはそれを押し止め、そして権三に懇願する。
私の夫・浅香市之進は妻の不義で恥をかき、その上、不義相手を討ち果たす妻敵討(めがたきうち)が出来なければ恥の上塗り。
それでは妻としてあまりに不憫なので、「どうせ死ぬのなら夫に討たれてください!」。
理不尽とも思えるこの願いを権三は受け入れる。
これも出世を望み、許婚を捨てようとした罰か……。

印象的なラストシーン

二人は、おさゐの夫・浅香市之進以外の者に斬られないように国を出た。
その二人を見つけ手に掛ける市之進。
権三は何の弁明もせずに討たれるが、おさゐは夫に真実を告げたかった。
しかし市之進は何も聞かずにおさゐを斬った。

この後、刀をじっと見つめてから捨てた、市之進役の人形遣いがいた。
今までに見たことのない演出だったが、妻を斬った苦しさ、武士の空しさが痛いほどよく判った。

赤字はデンマンが強調のため。
読み易いように改行を加えました。
写真はデンマン・ライブラリーより)



102-103ページ 『名作文楽50』
著者: 高木秀樹
2005年7月1日 初版第一刷発行
発行所: 株式会社 世界文化社


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デンマンさん。。。あんさんは古臭い文楽などに関心がありますの?


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あきまへんか?

あっかァ~ん!と言うつもりはないんやけど、どないなつもりで文楽など持ち出してきやはったん?

あのなァ~、めれちゃんは文楽が古臭いというけど、この『鑓の権三重帷子』は、『堀川波鼓(ほりかわなみのつづみ)』と『大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ』と共に近松門左衛門の三大姦通劇と言われて現在でもよく知られてるゥ。 実際、1986年には映画化されてるのやでぇ~。。。

鑓の権三


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近松門左衛門原作の世話浄瑠璃『鑓の権三重帷子』の映画化で、1986年に作られた。
「卑弥呼」の富岡多恵子が脚色。
監督は「瀬戸内少年野球団」の篠田正浩。
撮影は同作の宮川一夫がそれぞれ担当。

あらすじは世話浄瑠璃『鑓の権三重帷子』とほぼ同じだが
おさゐは「どうせ冥土へ行くのなら、権三と夫婦の契りをかわしてから」と、旅篭(はたご)で激しく愛しあう。

宇治の川岸にかかる橋の上で、ふたりはついに市之進と出会った。
そして、彼の刀に倒れるのだった。
一件落着し、浅香家では遺児・虎次郎が亭主となり、茶を立てている。

配役:

郷ひろみ (笹野権三)
岩下志麻 (市之進女房・おさゐ)
火野正平 (川側伴之丞)
田中美佐子 (伴之丞妹・お雪)
加藤治子 (お雪の乳母)
津村隆 (浅香市之進)
水島かおり (市之進娘・お菊)
嶋英二 (市之進伜・虎次郎)
浅川奈月 (市之進娘・お捨)
大滝秀治 (岩木忠太兵衛)
三宅邦子 (忠太兵衛女房)
河原崎長一郎 (忠太兵衛伜・甚平)
竹中直人 (権三の同僚・文右衛門)
浜村純 (道具屋の主人)
小沢昭一 (船頭)



篠田正浩監督作品

『乾いた花』 『鑓の権三』






デンマンさん。。。あんさんは上の映画を観やはったん?



もちろんやァ。 『堀川波鼓』は1707年2月15日に、大坂竹本座で初めて演じられた。 1706年に起きた、鳥取藩士が妻敵(めがたき)を討った事件を基にして近松門左衛門が書いたものなのやァ。 そやから、『鑓の権三重帷子』も、実際に起きた事件を基にして近松が書いたものやと思うねん。

つまり、実際に起きた事件を基にして近松のおっさんが書いたものやさかいに、あんさんは観る気になりはったん?

そうやァ。。。そやけどなァ~、次の箇所はドラマチックにするために付け足したと思うねん。


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おさゐは忌々しい帯を権三から取り、

私のを締めればいいと自分の帯を解いた。

すると、この状況を伴之丞が目撃する。




この場面はあまりにも不自然やと思うねん。



どうして。。。?

このような見え見えの事をするかいな! これでは、「私たちが不義をしている所を見て!見て!」と宣伝しているようやないかいなァ! アホらしくて、観ているわての方が恥ずかしくなったでぇ~。。。

なにも、あんさんが恥ずかしくなることはおまへんがなァ~。。。

とにかく、観客の目に不自然やと思われるような事はせ~へんこっちゃ!

。。。で、あんさんは、その事が言いたいために、わざわざ『鑓の権三重帷子』を取り上げはったん?

ちゃうねん。。。そのような些細な事で記事を書くかいなァ!

そやったら、どないな理由で『鑓の権三重帷子』を取り上げはったん?

あのなァ~、このような不義密通をテーマにした作品は“姦通物(かんつうもの)”と呼ばれておるのやけど、戦後、姦通罪が無くなったのに、どうして未だに人気があるのか? その事をわては考えさせられたのやがなァ。

それで、記事のテーマにしようと思いはったん?

そうやァ。 江戸時代から太平洋戦争まで、この姦通罪は、不義をした妻と、その相手の男だけに適用されて、この二人が罰せられた。 つまり、夫が妻以外の女と浮気をしようが2号さんを持とうが罪とはならへん。

それは男女同権に反しますやん。

そやから、戦後、姦通罪は廃止されたのやがなァ。 それにもかかわらず、未だに『鑓の権三重帷子』が上演されたり 1986年には映画にもなった。 つまり、人気が続いているねん。

『忠臣蔵』が未だに人気があるのと同じ理由やと、わたしは思うわァ。 つまり、吉良上野介を悪者にして、悪い奴をみなで懲らしめはるゥ。 そういう場面を見て日本人は気分良く日常生活に戻ってゆきはる。 気分がすっきりして癒されますねん。

なるほどォ~。。。言われてみれば分かるような気がする。 そやけどなァ、『鑓の権三重帷子』の場合はちょっと違うと思うねん。

どないに。。。?

実は、日本の家庭の主婦は、多かれ少なかれ「おさゐ」さんのような中年女性が多いと思うねん。

伝授を望む権三の来訪を、おさゐは喜んだ。

美男の誉れ高い権三で、

娘の夫になってもらいたいと、

おさゐは権三に伝え、

もし承知してくれれば伝授すると約束した。


つまり、たいていの主婦は打算的で、スーパーならば人よりも良い物を安く手に入れたいと思う。 夫に失望している妻は、せめて娘だけには夫よりも有望な若者を探して見合いでもさせたいと思うてる。 しかも、最悪の状態になっても、諦め切れない未練がましい気持ちにとらわれる。 そやから映画のような状況に共感する。


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おさゐは「どうせ冥土へ行くのなら、

権三と夫婦の契りをかわしてから」と、

旅篭(はたご)で激しく愛しあう。




つまり、このような願望を日本の中年主婦が持っていると、あんさんは言わはるのォ~?



夫に失望している妻ならば、当然やろう?

そうやろか?

そやけどなァ、おさゐも権三も殺されてしまうのや。 それを見定めて観客の中年主婦は、きっと次のように思うねん。


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ああ~  思えば、わたしだってぇ、

同じような状況であれば、

同じような事をするかも。。。

駄目な夫と生活しているけれど、

殺されるよりは

生きて旨い物でも食べていた方がええわァ。


ここで初めて常日頃不満タラタラの家庭の主婦は蜜の味を感じるのやァ。
 
 
“他人の不幸は蜜の味”
 
 


あんさん!。。。、これはかな~り性格の悪い解釈ですぇ~。。。



さよかァ~。。。?

【レンゲの独り言】


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ですってぇ~。。。
デンマンさんは近松門左衛門の作品にハマっているようですわ。
かつて『心中天網島』(しんじゅうてんのあみじま)について次の記事を書きました。


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『心中と切腹』

(2010年11月25日)


同名の人形浄瑠璃は1721(享保5)年に、大坂竹本座で初演されました。
実際に1721年に起きた、紙屋治兵衛と遊女小春の心中事件を基にして書いた作品です。
愛と義理がもたらす束縛が描かれており、近松の世話物の中でも、特に傑作と高く評価されています。
また、道行「名残の橋づくし」は名文として知られています。
後に歌舞伎化され、今日ではその中から見どころを再編した『河庄』(かわしょう)と『時雨の炬燵』(しぐれのこたつ)が主に上演されています。

とにかく、次回も興味深い話題が続くと思います。
あなたも、また戻ってきてくださいね。
じゃあ、また。。。


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ィ~ハァ~♪~!

メチャ面白い、

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こんにちは。ジューンです。

『堀川波鼓(ほりかわなみのつづみ)』も

近松門左衛門の三大姦通劇の一つですが、

この人形浄瑠璃は1707年2月の初演以来、

上演が途絶えていたのです。

それが1964年にNHKで復活しました。

これを映画化したものが今井正監督による『夜の鼓』です。

新劇では俳優座が『つづみの女』として上演しました。

鳥取藩士小倉彦九郎の妻・たねは、

夫が江戸詰めで国許を留守にして間に、

酒席で飲みすぎて、そのはずみで

鼓師・宮地源右衛門と褥(しとね)を共にしてしまいます。

そして不義の子を身ごもるのです。

その噂のために、妹のお藤(ふじ)の縁談は

破談になってしまいます。

隠しきれなくなったたねは、

夫への忠節を示すため自分の胸を突き、

非を詫びながら夫の手で絶命します。

たねの妻仇(めがたき)を討つべく、

彦九郎は復讐に燃える妹らを連れて

宮地宅へ討ち入り、本懐を果たすという物語です。

ところで、卑弥子さんが面白いサイトを

やっています。

興味があったら、ぜひ次のリンクをクリックして

覗いてみてください。


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『あなたのための笑って幸せになれるサイト』

とにかく、今日も一日楽しく愉快に

ネットサーフィンしましょう。

じゃあね。バーィ



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